ドードー鳥と秋の海

ドードー鳥と秋の海(前編)

「お前ムカつくんだよ!」 という罵声と共に桐島ふぶきが弁当の中身を顔にぶちまけられたその時、ボクは教室の一番後ろの席でラヴクラフトの短編集を読み耽っていたところだった。 だからその事前に一体どのようなやり取りがあったのか、黙ったまま睨み合っ…

ドードー鳥と秋の海(中編)

とぼとぼと歩くふぶきに歩調を合わせるのはなかなか面倒だった。数歩ごとに立ち止まって、ボクの後を歩くふぶきを振り返り、ついてきているかを確認する。 ふぶきは終始俯いていた。 「ちゃんと前を見ないと転んじゃうだろ?」 そう言ってもふぶきは「うん」…

ドードー鳥と秋の海(後編)

夏ももはや過ぎて肌寒くすらなっている今の時期にどうして海に行きたいなんて言い出したのか、ボクには理解できなかった。けれどまあ、ふぶきが喜ぶのならそれでいいかと思って承諾したのだ。 日曜日が来て、海からほど近い駅で電車から降り立った時、ボクは…